鳩小屋

落書き帳

シリコンバレーバンクショック


最近シリコンバレーバンク破綻騒動で市場が荒れていますね。
一言でいうと、シリコンバレーバンクという地方銀行がスピード破産して預金者の取り付け騒ぎが広がりかけたみたいです。
今回はFRBをはじめとした当局の対応も迅速に発表されたことでいったん落ち着きをみせています。

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来週の相場見通し(3/13~3/17)①|村松 一之(和キャピタル 運用本部部長)|note
来週の相場見通し(3/13~3/17)②|村松 一之(和キャピタル 運用本部部長)|note
来週の相場見通し(3/20~3/24)①|村松 一之(和キャピタル 運用本部部長)|note
来週の相場見通し(3/20~3/24)②|村松 一之(和キャピタル 運用本部部長)|note

あらまし

シリコンバレーバンクは、シリコンバレーのスタートアップ企業との結びつきが深く、ベンチャーブームの中で急成長してきた銀行とのことです。
一般的にスタートアップ企業は財務体質が貧弱であるため銀行から貸し渋りを受けることも多いのですが、この銀行はそういった企業に積極的な融資を行い、見返りとして企業の預金口座を開設してもらうことで(銀行が)運用できる資金を調達していました。

銀行は、お客さんからの預金に対して利子を付与する一方で、預金をより高金利な投資(企業融資や債券)に充てることで、利ザヤを稼いでいます。
例えば、私が利子1%の普通預金に100万円を預けると101万円になって返ってきます。その裏では、銀行が100万円を利子5%で企業に貸出すことで銀行は105万円を得ているようなイメージです。

コロナ関連の金融緩和(低金利量的緩和)が続いていたころはスタートアップ企業が元気な状態でした。
シリコンバレーバンクの預金はスタートアップ企業からのものが中心であり、スタートアップ企業が元気だったころは当然預入残高も多く好循環していたといえます。
ただ、最近の金融引締めによってスタートアップ企業が資金調達する際の金利が上昇し、業績が低迷し始めました。
これによって、スタートアップ企業の預金が引き出されることになりました。

このとき、シリコンバレーバンクにすぐに預金を引き出せるだけの「現金」があればよかったのですが、預金の多くは債券などの購入に充てられており手元には「現金」がありませんでした。そのため、シリコンバレーバンクは手持ちを債券を途中売却することになったようです。債券は満期保有すれば満額返済+利子の低リスク資産とされますが、途中売却する際はその限りではありません。債権の利子は日々上下するため、相対的に利子の高い時に買った債券は高く売れ、相対的に利子の低い時に買った債券は元本割れすることがあります。
とりわけ、シリコンバレーバンクは低金利のときに購入していた債券を保有していたため、金融引締め(新規債券金利の上昇)による元本割れのまま売却して資金調達することになりました。

要するに、現金を残さずに株式投資していた方がいきなり車購入で資金が必要になり、含み損の状態で株を売らざるを得なかったというイメージです。
普通の銀行はこのようなことが起きないように、一般市民の預金など様々な資金調達を組み合わせるようなのですが、シリコンバレーバンクはスタートアップ企業の預金に偏っていたため、スタートアップ企業の業績悪化→預金引き出し→含み損の債券を売却→預金引き出しで運用資金がさらに低下という悪循環に陥ってしまいました。

最後はSNSなども通じて経営悪化への懸念が預金者の間で急速に広がったと見られてます。これによって預金引出しが加速したことでスピード破綻してしまったのが顛末のようです。
特に、銀行が破綻すると一定額までしか保証されないため、個人預金よりも預金額の多い企業では懸念が迅速に広まったところもポイントです。

また、財務体制が脆弱なシグネチャーバンクでも連鎖倒産が発生し、ファーストリパブリック銀行も破綻が危ぶまれています。

今回のSVBの破綻は「特殊なビジネスモデルを原因とする個別行の資金繰りの問題であり、米国の金融システム全般を脅かすものではない。」との意見が優勢ですが、金利上昇による企業業績の悪化が続けば似たような事例が続く可能性もあります。当局が預金者の預金を全額保護することや銀行に資金を貸出す仕組みを提供したことで取付け騒ぎの連鎖はいったん食い止められた印象です。当局の対応内容もなかなか面白いですが、参考リンクで詳しく解説されているので割愛します。

ついでですが、クレディスイスも怪しいようです。ここは元から不祥事などが続く問題児銀行だったのですが、便乗して破綻懸念が浮上しています。国際金融市場に責任を負う存在であるため最終的には救済されると思いますが、措置が難航すればそれらが金融不安として株価下落の要因となりそうです。

資産運用方針

シリコンバレーバンクショック前は、FRBがインフレを抑制するために金利を上げるか打ち止めとするかが議論の対象となっていました。
具体的には、雇用統計や消費者物価指数が重要視されるため、インフレが思うように沈静化していない兆候が見られたことで、政策金利がまだ上がっていくのではないかという市場予測が優勢でした。

ただ、シリコンバレーバンクショック後は、金利上昇に起因する金融不安が拡大したことで、一転して政策金利の打止めもあるのではないかという状態になっています。

金利の市場予測(今年から利下げの予想)

もちろん、シリコンバレーバンクショックのようなケースを食い止められなければ金融危機が到来して株価は即暴落すると思いますが、そうならないシナリオもある程度予想しておく必要があります。

金利自体は、インフレがある程度沈静化している点や金利の引上げが企業業績を圧迫している点を考えれば、打止め自体は近いと思われます。ただ、金利を据え置きとするか利下げとするかはインフレ動向や今後のリスク事案に左右されるため、正直分かりません。ただ、利上げが打止めになる一点に限ればほぼ確実ですので、この期待で一時的に株価は上昇するかもしれません。ただ、高金利は企業業績を遅効性毒のように蝕むため市場予想を上回る速度でこれらが進めばこれを嫌気して株価が下落していくことも考えられます。特に約10年単位で起きている大暴落はまだ起きていないため、これに巻き込まれることだけは回避が必要です。
この大暴落が起きていない根拠としては、シグナルとなる失業率が上昇していない点や逆イールドが反転しきっていない点が挙げられます。

米国の失業率と株価の関係を徹底解剖~失業率に見る景気の行方 | F-Style Magazine

米国の実体経済がどのように着陸するかはFRBの手腕にかかっていますが、軟着陸となるか墜落となるかは当のFRBにすら見通せていません。
金融不安が再燃しないこと、インフレが再燃しないこと、新たなリスクが顕在化しないことなど、条件が揃えば上昇の余地はありますがこれに全ベットするのは非常にリスキーです。
ですので、リスク許容可能な範囲まで現金比率を高めておき、暴落時に投入できる資金は準備しておくのがベストかと思います。
直近では、FOMCがあるのでFRBがインフレを抑制する金融政策と金融不安に対処する政策についてどう説明するかがポイントになりそうです。あと、クレディスイス周りも解決していないので救済が難航すれば不安定な相場になりそうです。