鳩小屋

落書き帳

物価上昇の状況整理

エネルギー費、食費など、去年の秋ごろから発生した家計直撃イベントの状況整理。

コロナ防疫

コロナウィルスの感染が拡大してから丸2年以上経ちましたが、世界的にはある程度折り合いをつけて経済活動を再開する潮流になっています。
ただ、感染者増加による工場停止や海運コンテナの稼働率低下など、サプライチェーンが混乱、つまり需給における「供給が弱い」状態で、経済活動を再開して「需要が高い」状態になると物価の上昇を招きます。特に、エネルギー費の高騰は生産から物流まで影響を与えるため、春頃から広い範囲でインフレが進んでいます。他には、中国のゼロコロナ政策による供給力低下も影響していると言われています。
ワクチンが変異種に効かなかったり、副反応があったりとインフルエンザレベルまで抑え込むにはまだ時間がかかるものの、サプライチェーンの混乱は一時的でインフレ自体はすぐに落ち着くはずでした。(ウクライナ侵攻がなければ)

ウクライナ侵攻

コロナ防疫の影響が残った世界情勢をさらに混乱させたのが2月に始まったウクライナ侵攻です。特に経済制裁によるロシア産天然ガスの輸入削減や物流混乱は世界の物価を上昇させました。
エネルギー関連ETF(上場投資信託)の価格推移を見ると、去年の秋ごろから上昇していた価格が未だに高止まりしていることがうかがえます。

エネルギー資源費はガソリン代から電気代、食品の輸送費から包装に至るまで幅広い分野に関わるため、家計圧迫の要因になります。

もう一つの問題は、黒海封鎖によるウクライナ産小麦の輸出停止でしたが、こちらは部分的に解決されつつあります。ウクライナ産小麦の輸出は世界の1割を占めるため、完全にストップすると供給先の国(特に途上国)で食糧危機がおこり、最終的には食糧暴動が発生します。スリランカの件もこの一例と言えるかもしれません。ただ、モスクワ撃沈やズミイヌイ島奪還、国際世論の批判により、ロシアから「農産物を載せた貨物船が航行中は、ロシア軍は黒海に面したウクライナの港・船舶を攻撃しない」という合意を取り付けています。機雷やロシアが約束を守るかどうかの問題は残っていますが、小麦供給の問題は快方に向かうとされています。

ウクライナ侵攻終結の見通しですが、短期決着の可能性は低そうです。ロシアは毎日10億ドル以上のエネルギー収入があり、経済面でまだまだ余裕があります。制裁によって精密兵器の供給には支障が出ていますが、ソ連時代に貯め込んだ大量の陸軍兵器を保有しているため、こちらの枯渇もあてにできません。人員面についてもロシア人ではなくロシア連邦を構成する貧しい諸国の民族を動員しているため、本格的な人員枯渇や反乱も望み薄です。一方、ウクライナ側は、NATO諸国から継続的な兵器供給を受け、それらを器用に使いこなして戦果をあげています。ウクライナ側が優勢となる戦域も増えてきましたが、NATO側の兵器供給もロシア側を圧倒しない程度に絞られているため、ある程度の膠着は避けられないと思われます。

金融混乱

米国編

コロナ防疫とウクライナ侵攻に付随して金融面でも大きな混乱が起きています。
コロナ期間(2020年~2021年末)は、経済活動の縮小で行き場を失った資金が証券に流れ、金融市場で劇的な上昇基調が続いていました。そのため、猿でもなんか買っとけば儲かるような状態でした。
ただ、米国のFRB(日本における日銀)が量的引締め(大量購入していた国債が売却され金利が上昇)を開始したことでその勢いは失速しました。さらに、FRBはコロナ防疫の余韻とウクライナ侵攻の複合要因で発生した歴史的なインフレを抑えるために政策金利の引き上げも開始しました。政策金利は銀行間の貸借りをはじめとして、企業融資への金利、住宅ローンなど、幅広い分野の金利に影響を与えます。金利が高いと借金の利子が膨らむため、購買意欲などが低下して需要が低下するとされています。これによりインフレを抑えようとするのがFRBの金融政策の狙いです。ただ、政策金利は需要には効果があるものの、サプライチェーンの混乱といった供給面への効果は限定的とされています。

ここで、米国のインフレ状況を表す指数で重要となるのが「CPI(消費者物価指数)」になります。 グラフを見ると2021年頃から急激な上昇を見せていて、7月の発表でようやく前年月を下回りピークアウトとなることが期待されています。ただ、日本の物価上昇が2%に対して米国が約9%であることを考えると、米国のインフレがいかに進んでいるかが分かります(日本はデフレからスタグフレーションに移行)。


米国 消費者物価指数 (前年比)

米国では給料もうなぎ上りではあるものの、物価上昇率の方が高いため、生活は貧しくなっていると言えます。FRBはこのようなインフレ指標を確認しながら政策金利の上げ幅を決定しているため、金利上昇や株価の動向を把握するうえで重要な指標となっています。

日本編

ここまで米国のインフレや金利政策を見てきましたが、これは日本国民の家計を苦しめる円安の原因にもなっています。
国債金利政策金利は厳密には別物ですが、正の相関関係があります。つまり、政策金利が上昇すると国債金利も上昇するような傾向があります。
米国では前述のとおり国債金利が上昇していますが、一方の日銀(日本銀行)では、これらの金利を押さえつける低金利政策(指値オペ)を継続しています。
グラフをみるとわかるとおり、最近は日本国債米国債金利差が拡大しています。

資金は金利が高い(儲かる)方に流れるため、円を売りドルを買うという流れが強くなっています。
これによって円安が進み、食品やエネルギー資源の輸入価格に拍車をかけています。これらは、貿易赤字にもつながる(円よりもドルを買っている状態)ため、更に円安がすすむという悪循環の側面もあります。
円安の良し悪しは判断の分かれるところですが、国民の家計に限っては物価上昇として重くのしかかります。

では、日銀はなぜ低金利政策を続けるのかという疑問にたどり着きます。これは景気低迷の中で金利を上昇させるとさらなる景気の悪化を招く可能性があるためです。そもそも日本経済はお世辞にも金利上昇に耐えられるような状態ではなく、国債金利上昇による国庫の圧迫や住宅ローンの変動金利の上昇など、負の側面が想定されます。そのため、状況を好転させることはできないものの、金利を上昇させるよりマシという考えのようです。
政府としても打てる手があるわけでなく、緊張感をもって注視する以外は何もしてくれないようです。おまけに給料の上がらない国民は座して耐えるのみです。

個人的な対応

コロナやウクライナの問題は一時的なものですが、スタグフレーション(所得が上がらず物価のみ上昇)は今後も続くと考えています。
社会保障費が上がっていくようなことも考えると、やはり頼みの綱は資産運用ぐらいかもしれません。
最近は相場が怪しい動きをしているので控え気味ですが、運用益自体は出せているのでまったりやるしかないですね。