ISMAPと政府統一基準の動向

 

ISMAP登録サービス

ISMAP(Information system Security Management and Assessment Program)は、政府が求めるセキュリティ要件を満たしているクラウドサービスをあらかじめ評価・登録することにより、政府の調達におけるセキュリティ水準の確保とクラウドサービスの効率的な導入を目的とした制度です。ISMAPに登録されたクラウドサービス(事業者)は官公庁との癒ちゃ...信頼のもと、入札工程を短縮できます。そして、今年3月にISMAPの第一波登録リストが公開されました。

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Microsoft Azureがないのは驚きですが、どうやら第一ウェーブにこだわらなかったようです。

また、Salesforce ServiceやHeroku ServicesなどのSaaSベンダ、PaaSベンダも並んでいます。これらのサービスはAWSのIaaS上に構築されていることから、第3者ベンダの基盤を利用してサービスを展開しても認証取得できることが分かります。

巨大ベンダは遅かれ早かれ取得していくと思われますが、判断が分かれるのは、中規模ベンダではないでしょうか。理由は、単純に費用対効果です。ISMAPはガバナンスから技術対策まで約1000項目に対応する必要があります。すでに国際規格のCSAに準拠していたり、日本の官公庁案件に比重を置いてない場合、認証コストが割に合わない可能性もあります。今後の登録動向に注目です。

さて、ISMAPは、「政府」と「クラウドセキュリティ」がキーワードのレギュレーションですが、関連規格も見てみましょう。

 

政府系ガイドライン

まず、官公庁の調達基準として「政府統一基準」というものがあり、オンプレミス環境を前提とした情報セキュリティ全般の管理策で構成されています。これは、政府にシステムを納品する際の基準となるため、元請けがSIerであろうとクラウドサービス事業者であろうと対策を実施する必要があります。

一方、ISMAPは、クラウドサービス事業者のみを対象とした管理策で構成されています。すでに説明したとおり、ISMAPはクラウドサービスを認証する制度のため、クラウド利用者の対策は含まれていません。そのため、SIerが元請けの場合は、クラウドベンダのISMAP認証有無に関わらず、利用者側の対策を実施する必要があります。

 

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ちなみに、ISMAPは、ISOや政府統一基準をベースにしていて、残りを米国標準のFedRAMPで補う構成になっているようです。

①国際規格
 情報セキュリティガバナンス(ISO 27014)
 情報セキュリティマネジメント(ISO 27001、ISO 27002)
 クラウドサービスの情報セキュリティ(ISO 27001)
②政府統一基準
 ①に含まれない内容かつ統一基準を満たすのに必要な項目を追加
 その趣旨を残したままCSP向けに書換え
③米国基準
 ①、②に含まれない観点を追加
 FedRAMPのインシデントレスポンスに関連する内容を中心に項目を追加

クラウドセキュリティガイドライン

次に、クラウドセキュリティのガイドラインも確認してみましょう。図を見てわかるとおりクラウドセキュリティのガイドラインは3種類に大別されることが分かります。

クラウド全般の対策

クラウド利用者のみの対策

クラウドベンダのみの対策

ここがクラウドセキュリティのややこしいところですが、クラウド利用者は自身の責任がまとまった②、クラウドベンダであれば③を主に利用します。一方、システムの発注側は、②や③には興味がなく、全体としてセキュリティが担保された①を重視します。このように、クラウドセキュリティのガイドラインは立場による使い分けが求められます。Salesforce ServiceやHeroku Servicesのように第3者クラウドベンダが絡むとさらにややこしくなることが想像できるかと思います。

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CSAとISMAP

クラウドセキュリティの策定団体の有名どころとして、CSAがあります。CSAは、ガイドラインの発行だけでなく、クラウドベンダの認証制度も用意しています。

  • CSA セキュリティガイダンス

   クラウドセキュリティ全般の考え方

  • CSA CCM(Cloud Controls Matrix)/CAIQ

   クラウドサービス事業者向けの実装基準の位置づけ
   他の国際標準、業界標準との対応付けを含む

  • CSA STAR認証

   準拠事業者登録制度

 

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クラウドベンダを対象としたISMAPとCSA CCMのベースガイドラインを比較してみましょう。(適当にググっただけなので間違っているかもしれません)

ISMAPがISO系列を広くカバーしているのに対し、CSAでは、他の同等規格をベースにしています。

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ISMAPとCCMに関する取り組みとして、CSA JAPANがこれらのマッピングを試みています。国際的にみればISMAPはガラパゴス規格という扱いであり、国際標準の地位を確立したCSAと関連付けることで存在感を増したいという狙いがあるそうです。

ただ、途中経過の報告をみる限り芳しい結果が得られていないようです。ベースガイドラインの違いやカテゴライズの違いが影響しているのかもしれません。

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CSAとISMAPはベースガイドラインが異なっているため、両方取得できれば無敵ですが、コスト面から片方しか取得しないベンダもいるはずです。クラウドサービスを利用する際は準拠状況を確認すると面白いかもしれません。

 

 政府統一基準の改定案

4/26に政府統一基準改定のパブコメ募集が始まりました。

改定案を確認すると、「①クラウド利用者の対策」「②ゼロトラスト?」「③テレワーク」とあります。特に①は朗報といえるかもしれません。

今までクラウド利用者視点の対策は、オンプレミスベースで書かれた対策をクラウドに当てはめる作業が必要でしたが、今後は不要になるようです。

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